本に呼ばれた…か。

そんな読書家でもないんで、
書店に行くと、普段は(好きな作家さん以外は)
ドラマや映画に映像化されるのや
本屋大賞候補作とか話題本や新刊を手に取るんだよね。

でも、ズラーーーーと並んでる本の中で
タイトルが書かれたその表紙に引きつけられて…
内容も知らないのに、買わずにいられなかったんだ。
もうね、本にね、「読め!読め!」って
呼ばれたとしか思えない。


そんで、どよーーーーーーんと。
あぁ、あたしって役(登場人物)から
抜け切れない!
私生活も侵食される憑依型の女優だわっ!


心の中がニトログリセリンのような
“魔”というか“闇”に浸されたよ。


角田光代さんの『森に眠る魚』

東京のある文教地区に住んでいる主婦5人
(最初は、この5人が誰が誰だか把握するのにひと苦労)
小学校お受験をきっかけに、
彼女たちの関係や精神の
均衡が崩れていくんだよね。

そう、これは10年以上前に
文京区音羽の幼稚園で起きた
幼女殺人事件を基にしてるんだ。

(誰があの事件の犯人に当たるのか?殺されるのか?
その終末に近づいていくヒヤヒヤ感!)

じつはその幼稚園のすぐ近所に
友だちの夫婦が住んでて
(彼らの子どもは別の幼稚園に通った)
教育熱心な親が多く、東京の中心でもあり、
山手線の外れでもあり、いろんな家庭環境の人が
混在している地域っていうのは聞いてたから
すごくリアルで…
ううん、いや、あたしの感情にはリアルで。

あっ、その前にフジテレビのドラマ
『名前をなくした女神』って
あたしも楽しんで観ちゃってたんだけど
完全にこの小説のパクリだったんだね?!
角田さん、よく怒らなかったなぁ。
(角田さんの小説っていっつも怒りのマグマ
溜めてるイメージだからさ)
フジも言い逃れしただろうけど
細部まで模倣して、ドラマ製作者(脚本家)として
プライドとか羞恥心とかないのかなぁ?


そう、そう、価値観は人それぞれ。

この小説も、他人との歪みが生まれていくさまが、
もう怖くて怖くて。


登場人物の特定の誰かに
感情移入もしないし

(いちばん近いのは千花ってキャラかな←図々しい)
むしろ、彼女たちのネガティブさや、責任転嫁
そして非常識なふるまいへの

嫌悪感や侮蔑や、頭の悪い女への差別意識が

自分のなかで、黒く染まっていくのが怖かった。
そしてそのニトロがいつ爆発するのか。


でも、あたし薄っぺらい人間なんですよ。
しゃべり方をはじめその性癖で
「変わってるね~」とか言われるんだけど
思考はいたってフツー。むしろつまらん。
固定観念に縛られてるし、羽目外せない。

だから、オネエキャラの面白さや経験値を
勝手に期待されて来られても、
ガッカリさせちゃう。


「自分は自分」なんて言い切る自信なんてない。
だから周囲にも合わせるし(隠れるし)
計算もするし、嘘でも笑うし
なにより、信頼できる人を欲する。

今回【も】、角田さんの描く世界は
男性キャラが希薄なんだけど
否定や懐柔してくるからなんもしゃべりたくない
そんな旦那さんなんてNoぉぉおおお!

聞き流されるとしても(←100%SOかもね)
なんでも話せる人がいい。
ぶつけられる人がいいよ。

「自分」がないぶん、恋愛にも依存しちゃうし
正直、仕事に必死なのも
(フリしてるのも)
なにかにすがらなきゃ、立ってられないし
もうね、“芯”がない人間なんだ~。


もし、女に生まれて、結婚して子どもを産んでたら
この小説のように、
ママ友の世界にどっぷりつかってたし
自分の不足分を埋めるためだけに
子どもに“お受験”させてたんじゃないか?
って。

まぁ、いま女に生まれてなくても、結婚してなくても
自分は「なにか足りない」って焦燥感と
「なんも持ってない」のがみんなにバレちゃうって
不安は、いつも横にあるんだけどさ。


逆に「他人なんて関係ないじゃん、あたしはあたし」て
言えちゃう、思えちゃう人には
理解できないかもしれない。
あたしだって、逆に
そんな素の自分でいられるなんて!!
恋愛でも、仕事でも、世の中にも
たいして考えることもしないで、
受け容れられると思うなんて!

そういう価値観の違いに、他者との歪み
黒い渦がぐるんぐるんと。心が狭いの。


あたしは、まるで森の中の「魚」のように
深く暗いところへ。


大概の人は「女って面倒くせっーーー」
「くだらねえ人間関係だな~」
別世界のフィクションとして
割り切って読めるのかな?
でも、あたしは心が絡めとられて…。
それがどうしてなのか、上手く咀嚼できないまま
うつうつとして本の世界に引きずり込まれてたんだ。


でーーーー読み終わって、日が経って……

アレ?なんで凹んでたんだろ?
不安だったんだろ?暗くなってたんだろ?


憑き物が落ちたように、いま、心はスッキリ!(笑)

なんだったんだろ?

やっぱり、本に(別世界に)呼ばれたのか。