熱く語りたいんだけど、眠くて、眠くて。
久々に、明け方まで一気読みしちゃったよ。
桐野夏生さんの『IN』
もうね、どぉーーーっぷりと
暗闇を、果ての見えない暗闇をはいずってはいずって

抜けきった先は、荒涼とした魂の墓場。
それでも「読書が好きで良かった!」と
心底思える読了感だったんだよね。


正直『グロテスク』以降
(この作品はあたしが人生で
好きな本ベスト3に入るし)
桐野さんの作品は、振れ幅が伸びきりすぎちゃって
「つ、ついて行けないっす、桐野姐さん…」って
引き気味だったんすよ。
それに

「たかが恋愛、と
笑う人々は
何も知らないのだ。」


のキャッチには、惹かれていたんだけど
恋愛の“抹殺”、相手の心を“殺す”という
テーマに、自分が飲み込まれちゃうんじゃないか
怖くて手に取れなかったの。

そしたら、会社で読書好きの女の先輩が
(今年定年で、独身の女性)
「すごい面白かった」と貸してくださったの。

怖る恐るページを開いた先には
開けちゃいけない、でも開かずにいられない禁断の扉。
そして読書という名の、時間も空間も忘れちゃう
“旅”にレッツゴーでした。


内容に興味ある方は、自分で調べてください(笑)
島尾敏雄さんの『死の棘』をモチーフにした
愛するが故に、憎むが故に、
夫を、妻を、愛人を、家族を、心を、愛を
壊して(殺して)生きていく話なんだけど
コレって桐野さんの私小説なんじゃ?
桐野さんのwikiはもちろんのこと
「桐野夏生 不倫 噂」とかで検索しちゃうくらい
もう自分の感情や心臓をえぐり取ったんじゃ?って
思うほど真に迫ったものでした。

もうひとつのキャッチコピー

「小説は悪魔ですか。
それとも、作家が悪魔ですか?」


桐野さんは、小説を書くために悪魔メフィストと
契約したんじゃないかな?

もう書くためには、命削ってるんじゃないか?
心から血がダーダー流れているんじゃないか?
そんな“覚悟”と“業”に打ちのめされましたよ。

あたしの読書のルーツは、太宰治と三島由紀夫なんだけど
彼らと同じように、それ以上に女性特有の残酷さも含めて
人間の悪意に満ちてるの。
時々、自分が狂ってるんじゃないか?
この全身を焼きつくすような人への嫌悪や、愛情
どうなっちゃうんだろ?
年とともに薄れていくのか?
自分が自分で怖くなるんだけど、
この小説を読んで
煩悩に焦がれる人は、何十歳になっても
死ぬまでも、この炎は消えないんだなぁ~と、諦めた。(笑)

あたしに、この小説を熱心に貸してくださった
その女の先輩、職場ではすごく穏やかで品のいい彼女の中にも
あたしや、みんなが知らないマグマが燃えたぎっているのか。

それに、桐野さんもこの小説に関する対談で
「この小説の登場人物を“ゲイ”してたら
もっとドロドロになる」
って語っていたけど
いまや、この時代、障害がある恋愛って言ったら
「不倫」か「同性愛」だもんね。
恋愛の涯てにたどりつける(たどりつきたい)のは、
女とゲイなんだよね。

芸能人でも略奪の果てに結ばれたカップルって
大竹しのぶの前夫にしても、ドリカムの吉田美和にしても
男の方が早死にしちゃうじゃない?

久々に精神を蝕まれ、気力を要した小説だったよ。
でも、すごく満足。